本研究は,北海道内で発生したRC 床版の押し抜きせん断破壊の実態から,上面に凍害による劣化現象が生じた場合の,床版の破壊プロセスや疲労寿命について検証し,今後の積雪寒冷地の橋梁維持管理について検討することを目的に行ったものである.実際に凍害による劣化が原因で全面的に打ち替えられることになった床版を試験体に用いて,輪荷重走行試験機による疲労載荷実験を行い,劣化の無い床版と比較して,凍害劣化による影響について検討した.[*]検討結果について以下に述べる.1)上面が凍害劣化現象を生じている床版でも,破壊に至るメカニズムや,破壊時のモードが押抜きせん断であることは,劣化の無い床版と同様である.2)床版の疲労寿命は,上面の劣化深さに応じて低下する傾向であり,松井式の係数項を考慮することで劣化床版の余寿命を予測できる可能性がある.3)上面劣化した床版の余寿命予測式より,劣化していない床版の疲労寿命に比べて,上面が1cm 劣化した床版で約16 分の1,3cm 劣化した床版で約100 分の1,4cm劣化した床版では約170 分の1 にまで低下することが類推された.4)たわみによる劣化度では,上面のかぶり部分が薄くなることで有効断面が小さくなり,実際のたわみが理論値を上回るため,劣化度が1.0 を超えて破壊に至るものと予測していたが,概ね約1.0 で破壊に至る結果となった.5)上面が凍害劣化した床版では,2 体がひび割れ密度6.0~7.5m/m2で破壊に至っており,実際の橋梁でも同様な事象が確認されている.このことから,ひび割れ密度と破壊の関係は,凍害劣化を受けた床版の大きな特徴のひとつになるものと考察できる. |