| 近年、限られた沿岸域の水産資源を有効に利用するため、港湾・漁港施設等の沿岸構造物が本来有する機能に加えて、自然環境と調和させるための機能付加が強く求められている。北海道ではこれまで防波堤・護岸等へ藻場創出機能を付加した整備が行なわれており、その構造の多くは構造物前面や背後に小段を設置したものである。しかし、これらの創出された藻場は時間の経過とともに当初目的としていたコンブ類から多年生海藻への遷移や、日本海側ではウニの摂餌圧による藻場の消失などが生じている。そこで、整備後10年以上が経過した自然調和型構造物のうち、背後小段を有する施設において、藻場に関するモニタリング調査を実施した。その結果、寿都漁港(日本海南部海域)では、溝きりブロックで海藻着生効果がみられた。さらに、2007年2月の平均水温に比較して、2008年2月は約2.5℃低く、このときのコンブ現存量は、2007年に比較して約10倍の現存量であった。よって、冬季の水温が繁茂期のコンブ現存量の環境要因の一つであることが示唆された。様似漁港(太平洋海域)では、ミツイシコンブ着生の阻害要因が、小段基部から中央部まではウニによる摂餌圧で、中央部から先端部間は多年生小型紅藻類による基質の占有であることがわかった。これらの阻害要因の範囲は、ウニの活動を制限する流速環境に起因すると示唆された。 |