北海道北部,天塩川水系サロベツ川の中・下流部に広がるサロベツ湿原(図-1)は,昭和49年に利尻礼文サロベツ国立公園の一部にも指定され,貴重な動植物の遺伝資源,洪水調節能,水資源確保,環境教育の場,観光資源といった多角的な機能を有している.ところが,ここ数十年にわたる湿原周辺域の排水路整備等の開発の影響や,近年の水文環境の変化1)も相まって,湿原域の乾燥化が進んでおり,湿原域へのササ(クマイザサ:Sasasenanensis (Franchet et Savatier) Rehder var. enanensis)の侵入が問題となっている.著者らは,既往の研究3)において,堰上げにより地下水位が高く維持された領域でササの生育が抑制されていることをヒントに,地下水位調節によるササ侵入抑制効果を調査してきた4).しかし,ササの生死の判定評価は主観的なもので時間を要し,客観的で迅速な判定手法の開発・導入が課題であった.本研究では,この地下水位調節によるササの生死(活性度)を定量的に評価する手法の開発を目的に,TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)を用いたササ地下茎染色と,吸光度の測定による活性度の定量的な評価手法の有効性を検証した.つぎに,地下水位,湛水に晒した期間,および地下水位変動がササ地下茎に及ぼす影響を室内試験して,この手法の適用性を調べた. |