| バイオガスプラントの運転に必要なエネルギーは、発生バイオガスをコジェネレーターで変換(燃焼)することで得られ、発電電力のうち余剰分は地域の電力会社へ売電することができる。一方、熱エネルギーは発酵槽や殺菌槽の加温に用いられ、余剰分は大気中に放熱している。近年、バイオガスを膜分離することでメタン濃度を高め、都市ガスの規格に適合するガス(以下、精製ガス)へ改質する精製圧縮充填装置が開発され、実証試験が進められている。精製圧縮充填装置を用いると、発酵槽や殺菌槽の加温に必要なバイオガス以外は、精製ガスの製造に用いる運転が可能となる。そこで本報告では、複数の農家のふん尿を処理する共同利用型施設である別海資源循環試験施設(別海プラント)で実測したデータをもとに、年間エネルギー収支シミュレーションモデルを構築し、バイオガスの利用方式を変えた場合のエネルギー収支をシミュレーションにより検討した。[*]その結果、精製圧縮時に排出されるオフガスをガスボイラーの燃料に有効利用することを想定したケースでは、精製ガス量が増えるため利用可能エネルギー量が増加した。また、プラント内の必要熱量の節減を想定して受入槽原料温度を2℃上昇させたケースでは、余剰熱が発生しない精製圧縮の場合、ガスの精製を増やすことができるため、利用可能エネルギー量を増加させることができる。すなわち、ガス利用方式が精製圧縮の場合には、エネルギーをより効率的に利用できることが明らかとなった。[*]今後、各ケースにおける施設建設及びメンテナンスにかかるエネルギー及び経費を考慮するとともに、バイオガスプラントの規模を変化させた場合を想定したシミュレーションを行い、バイオガスの利用方法について総合的に評価する必要がある。 |