藻場が大規模に消失するいわゆる磯焼け状態が全国で発生し問題視されている。この対策として、北海道内では10年以上前から防波堤や護岸等への藻場造成機能を付加した自然環境調和型沿岸構造物が整備されてきた。しかしながら、基質の経年劣化や近年の水温上昇等により藻場造成効果の低下が懸念されている中で、長期的な調査事例は少ない。[*]本研究は、自然環境調和型沿岸構造物の機能保全対策に資することを目的に、過去に整備された施設の藻場造成効果の持続性を現地調査等により把握し、機能低下の原因解明及びその対策について検討したものである。[*] 検討の結果、以下のことが判明した。[*](1)水面付近は海藻種や分布域に経年的な違いは見られないが、背後小段上は、経年的・季節的に違いが現れ、特に2007年と2009年には、ホソメコンブの分布域の減少傾向が見られる。[*](2)キタムラサキウニが高密度に生息する背後小段上では、冬期の高水温により、本来休眠状態であるはずのウニの摂餌が活発となり、海藻の幼芽・生長期に悪影響を与えているものと推察される。[*](3)現在の流動環境では、冬期水温が2009年と同等の状況が継続した場合、藻場を維持できないものと考えられる。このような高水温の状況下でも、ウニの食害を抑止する振動流速を確保するためには、背後小段の天端水深を1.4mまで上げる必要があると推定される。 |