家畜ふん尿を一定温度に保持しながら嫌気性発酵(メタン発酵)させるバイオガスシステムでは、メタン発酵によりバイオガス(メタン濃度約60%)が発生し、エネルギー源として利用することができる。共同利用型施設では、発生するバイオガスをコジェネレーター(以下、CHPと表記)やガスボイラーで燃焼させて電力および熱エネルギーに変換して利用する。近年、バイオガスの新たな利用方法として、二酸化炭素を選択的に透過する2段の分離膜を用いて、バイオガスを膜分離してメタン濃度を高め、都市ガスの12A規格に適合するガス(以下、精製ガスと表記)へ精製して利用する実証試験が進められている。さらに、分離膜を3段に増設することで精製時のメタン回収効率を向上させた精製圧縮充填装置(以下、精製装置と表記)が新たに開発され、同様に実証試験が行われている。そこで本報告では、発生したバイオガスの利用方法として①ガスボイラー、②CHP、③2段分離膜の精製装置、④3段分離膜の精製装置、の4ケースについてエネルギー収支を試算し、プラント外へ供給することが可能なエネルギー量を比較、検討する。また、バイオガス利用設備を製造する際にかかるエネルギー量を算出し、利用機器を変えた場合の設備のエネルギー量の変化を検討した。[*] その結果、バイオガスの利用方法を変えた場合のプラント外で利用可能なエネルギー量は、ガスボイラー、コジェネレーター及び精製装置(分離膜3段)のいずれで利用してもほぼ同程度であることが明らかとなった。しかし、変換したエネルギーの態様によって利用用途や利便性が大きく異なる。今後は、変換エネルギーの利用面での汎用性の評価や経済性を検討していく必要がある。 |