国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所

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論文投稿 バイオガスプラントが低炭素社会の一員になるためには

作成年度 2010年度
論文名 バイオガスプラントが低炭素社会の一員になるためには
論文名(和訳)
論文副題
発表会 畜産の研究2011年2月号第65巻・第2号【小特集】
誌名(No./号数) 畜産の研究 第65巻・第2号
発表年月日 2011/02/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
資源保全チーム石田 哲也(ISHIDA Tetsuya)
抄録
寒地土木研究所では北海道東部の別海町に乳牛ふん尿を主原料とした大規模な共同利用型バイオガスプラント:別海資源循環試験施設(以下、別海プラントと呼ぶ)を2000年に建設した。「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の施行(1999年)や「地球温暖化対策の推進に関する法律(1998年)」あるいは再生可能エネルギーの利用促進(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(1997年))といった社会的要望を追い風として、大きな期待感をもって2001年5月からプロジェクト研究での稼働を開始した。2004年度でプロジェクト研究は終了したが、プラントの稼働は2010年の現在においても継続している。稼働状況は決して定常的に順調とは言えない。加えて、北海道全域でのバイオガスプラントの建設・普及も低迷しており、このままではバイオガスプラントは一過性の流行で終息してしまう危険性すら感じる。[*] 筆者は本学会の第2回大会から、別海プラントの稼働状況・課題等の発表を続けてきた。今回、包括的な発表の機会をいただいたので、過年度の発表内容と重複する部分はあるが、別海プラントでの課題と対策を教訓として、北海道におけるバイオガスプラントの普及促進に求められる事柄を実利用者の立場から整理してみた。[*] 積雪寒冷な北海道においてもバイオガスプラントが通年で稼働できることは別海プラントで実証できた。安定した順調な稼働であればプラントの運転に必要なエネルギーも自給できる。共同利用型の場合、傘下の農家から発酵原料となるふん尿を収集し、生成物である消化液を圃場へ還元する運搬車の稼働が必須となる。この運搬車の燃料は、現在は残念ながら化石燃料に頼っているが、プラントが順調に稼働していればバイオガスを精製したメタンガスを燃料とするCNG運搬車の導入も夢ではない。[*] しかし、「長期に安定した順調な稼働」は、別海プラントでは現実には達成していない。その直接の原因は機械の故障やシステムの不調であるが、維持管理費の裏付けがあれば容易に乗り越えられる事柄である。別海プラントでは、共同利用型の大規模な発酵槽であることのメリットを活かして乳牛ふん尿以外の有機性廃棄物を有償で発酵原料として受入れ、バイオマスの資源循環に寄与するとともに維持管理費の創出に成功している。しかし、修理費は年数を経過するごとに嵩む傾向にあり、維持管理費の捻出は極めて切実な課題である。[*] バイオガスプラントの先進国であるドイツの場合は『環境・エネルギー対策の政策の当初では、バイオガスプラントの建設への高率な補助+売電価格の政策的支持からスタートして、一定の施設数を得た段階で、建設補助を廃止した。しかし、売電収入等で運営を賄っていけるのでバイオガスプラントの稼働を継続していけるし、建設費の償還も可能なので施設数も充実していっている。』と要約される。日本において同様の政策が実施できるとは考えにくいが、第3項で述べた二つの課題『①維持管理コストの低価格化と維持管理コストを賄うことができる収入の確保』と『②施設数の普及増加』において、①の解決が②の解決の呼び水になることを暗示している。[*] バイオガスプラントという市場が広がれば、技術も普及し、建設コストも維持管理コストも低廉化していくはずである。しかし、現状では建設コストや維持管理費が高額であるために市場が閉塞していると言わざるを得ない。このような負の堂々巡りを打破するためには「政策・施策・制度」による牽引が必要である。筆者は、その具体的な機関車の役割を「バイオマスタウン構想」が担ってくれることを期待している。2010年現在で同構想の登録件数は約279件で、うち、バイオガスが組み込まれているのは59件である。第3項で述べたようにバイオガスプラントはどこにでもあるバイオマスを幅広く発酵原料=資源とすることが可能な施設・技術であり、地球温暖化対策やエネルギー問題対策に貢献できる性能を有している。この性能をいかんなく発揮できる社会的・制度的環境が早期に整えられ、実行されていくことに期待したい。
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