酸性硫酸塩土壌は、イオウやイオウ化合物を高濃度に含有し、酸化すると硫酸が生成されるため、強酸性を呈する土壌である。そのため、植物や作物の生育に甚大な被害を及ぼす。農業の作物栽培での課題だけではなく、道路工事や河川工事の法面や後背地緑化の工事等においても課題となる土壌である。[*] 酸性硫酸塩土壌が見出された頃に比べれば、現在では、対策工法は格段に進歩しているが、酸性硫酸塩土壌という特殊な土壌の存在と分布域に関する情報は未だに充分に周知されているとは言い難い。[*] 資源保全チームでは、土壌保全研究室の名称であった1994年度に、その時点で確認できていた34箇所の酸性硫酸塩土壌の分布地点を整理して北海道農業試験会議(成績会議)に「北海道における各種酸性硫酸塩土壌の区分、分布および性状」1)(以下、平成6年度資料という)を提出し公表した。[*] その後、2010年度までに30箇所の新たな出現地点を追加記録しているが、取り纏めた情報としては未公表のままであった。また、平成6年度資料で公表した34箇所の中には、酸性硫酸塩土壌が出現した地点の位置を特定できる調査位置図等の情報が不備であったり、散逸してしまっているものもあった。[*] そこで、34箇所の資料を再整理して出現地点が判明した箇所と、新たな30箇所の出現地点の位置情報を緯度・経度で整理するとともに、出現地点の2010年における現状(特に、酸性硫酸塩土壌の露出状況)を確認する作業を行った。[*] その結果、44地点の緯度・経度と2010年時点での現地の状況を調査し、従前から蓄積していた土壌分析値とともに整理した。技術情報として発表する。[*] 酸性硫酸塩土壌は思いも寄らぬ場所から出現することがある。したがって、一般市民や土木建築事業者からの酸性硫酸塩土壌に関する種々の問い合わせに、いつでも的確に答えていけるようにデータの整理を充実させていくことは、研究機関として大切な使命であると考えている。そのためには、農業・河川・道路・建築といった部門を問わず工事現場から情報を提供していただくことが極めて重要である。関係者の協力を改めてお願いする。[*] 今回の調査で整理した、緯度・経度や土壌分析結果等は、出現地点ごとに1パッケージにして原本として保管してある。機会を得て電子データ化して情報の散逸を防ぐとともに、検索に供する態勢を整えたいと考えている。[*] 本報告が酸性硫酸塩土壌対策の一助となることを期待している。 |