国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所

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発表 麻酔・手術がニジマスに与える生理学的影響

作成年度 2010年度
論文名 麻酔・手術がニジマスに与える生理学的影響
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第4回サケ学研究会
誌名(No./号数)
発表年月日 2010/12/18
所属研究室/機関名 著者名(英名)
水環境保全チーム林田 寿文(HAYASHIDA Kazuhumi)
北海道大学環境科学院三好 晃治(MIYOSHI Koji)
(有)ネットケア辻 貴敏(TSUJI Takayoshi)
北海道大学環境科学院上田 宏(UEDA Hiroshi)
抄録
【はじめに】魚類に発信機などを装着する場合、麻酔をかけて手術を行うのが一般的であるが、その麻酔・手術後に回復させるための養生時間として通常、24時間程度が設定されている。河川や湖沼等で実験を行う場合、養生として供試魚を畜養カゴなどに入れるが、その際に供試魚が弱ってしまったり、発信機などが損傷・脱落してしまったりという問題が起きる。また産卵を控えている供試魚は、少しでも早く放流することが望ましい。しかし、麻酔・手術からの養生時間について調べた既往研究はほとんどなく、その生理学的影響は不明な点が多い。[*][*]【目的・方法】対象魚をニジマス(Oncorhynchus mykiss)として、麻酔・手術終了後にどの程度の時間で、遊泳力が回復するかを把握するために、(独)寒地土木研究所に設置してある流速可変式回流水槽を用いてオス14尾、メス14尾の合計28尾で実験を行った。実験は麻酔・手術から1時間後~36時間後で6時間ごとに5回の臨界遊泳速度(Ucrit)を測定し、それに対するニジマスの遊泳能力変化の解析、EMG(electromyogram)発信機による筋電位の解析、および水質計によるDo消費量の測定を行った。Ucritはニジマスの平均体長約50cmとして0.5BL・m/sより算出した流速V=0.25m/sでスタートし、15分毎に流速をV=0.125m/sづつ上げていき、ニジマスが可変式回流水槽内の後ろ側の網に張り付くまでの時間を計測し、Ucrit = Vi + (Ti/Tii×Vii) (Vi=張り付いた時の流速(m/s)、Vii=各段階で上げた増分流速(m/s)、Ti=張り付いた流速内での泳いだ時間(s)、Tii=各段階の時間(s))の式により算出した。実験条件は麻酔のみ、麻酔+外科手術(魚体にEMG発信機を装着するための穴だけを開けた)、麻酔+EMG発信機装着の3ケースを設定した。[*][*]【結果】3ケースの条件に関わらず、麻酔・手術1時間後にはニジマスの遊泳能力は十分回復することが明らかになった。1回目のUcrit測定時には不安定に遊泳していたニジマスが2回目以降効率的な遊泳行動を取り、EMG値からニジマスの学習能力の有無を確認できた。麻酔後1時間のDo消費量は、0.75m/sで遊泳した場合と同等の酸素を消費していることが判明した。今後は実験に用いられる頻度が高いシロザケなどを対象に同様の実験を行い、ニジマスとの比較などを行うほか、麻酔・手術後の血液成分の把握なども行う予定である。
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