1. はじめに[*]積雪寒冷地の道路事業では、一般的に斜面の安定に基づく標準勾配で切土して草本緑化し、雪庇や雪崩被害の状況に応じ、雪崩予防柵を設置することが多い。[*]一方、2005除雪・防雪ハンドブック(防雪編)では、雪崩予防対策としては雪崩予防柵による対策の他に、雪崩予防林の造成やポケットを設ける方法、切土小段幅を30年確率最大積雪深以上に広げる方法、斜面勾配を60°以上に立てる方法や30°未満に緩くする方法等も有効とされている。[*]本論文では、これらの雪崩予防対策の内、雪崩予防柵による対策と小段幅を広くする対策、そしてのり面勾配をゆるくする対策について、斜面安定性、景観面、環境面および維持管理面から検討を行った上で、モデルケースを設定して建設費の比較を行った。なお、ここでは各々の工法間での雪崩抑止効果の違いについては論じないこととしている。[*]2. まとめ[*]雪崩予防柵による対策と、小段幅を広くする対策、勾配を緩くする対策を、各々の工法間での雪崩抑止効果の違いについては論じないとして、斜面安定性と景観面、環境面、維持管理面でその機能を比較検討した結果、斜面安定性と景観性、維持管理面では、緩勾配化がもっとも優れ、その次に優れるのが小段拡幅であった。環境面では、どの対策が優れているとは言い切れなかった。[*]次に切深25mと15mでモデルケースを想定し、大きな山を背後に背負っていない平坦な地形に切土するという現場条件で、費用比較した結果、両モデルケースとも雪崩予防柵による対策が一番高価となった。[*]以上のことから、道路の調査・計画時から雪崩の発生しにくいのり面構造とした方が、斜面安定性、景観性および維持管理面はもとより、設計条件によっては建設コストにおいても有利になる場合があることがわかった。したがって、積雪寒冷地の道路の切土のり面では、道路の調査・計画時から、雪崩の危険性の予測と併せて、対策工法の比較検討を行うことが必要であると考えられる。 |