家畜ふん尿を主原料とする大規模バイオガスプラントでは、発生するバイオガスをコジェネレーター(CHP)で燃焼させて電力および熱エネルギーとして利用する方法が一般的である。これまで筆者らは、1日50m3の家畜ふん尿を処理できる共同利用型バイオガスプラント(以下、別海プラント)におけるエネルギー収支を明らかにし、プラント外部へ供給可能なエネルギー量を定量的に評価した。しかしながら、プラントの規模がさらに大きくなった場合、エネルギー収支に変化が生じ、プラント外部へ供給可能なエネルギー量も変わると考えられるが、それらを定量的に比較検討した事例はない。そこで本報告では、実際に稼働中の大規模バイオガスプラント(以下、鹿追プラント)で計測したデータを基にシミュレーションモデルを構築し、バイオガスプラントの規模が変化した場合のエネルギー収支を算出し、プラント外部へ供給可能なエネルギー量を定量的に評価した。[*]その結果、夏期には鹿追プラントでの熱エネルギーの産出量が別海プラントのそれと比較して多くなり、8月では約2.6倍の量を示した。一方、両プラントとも冬期には熱エネルギーをわずかしか産出することができない。その要因としては、規模が大きい鹿追プラントでは発酵槽が複数存在することと、円柱型発酵槽上部がゴム膜製であることにより、発酵槽からの放熱量が多くなったことが考えられる。このように寒冷地におけるバイオガスプラントでは、施設規模が大きくなった場合でも冬期にはプラントでの熱需要が大きいため、プラント外部へ供給可能な熱エネルギー量は非常に少ないことが明らかとなった。したがって、バイオガスプラントから外部へ供給するエネルギーの利用方法を検討する場合には、これらの特徴を考慮することが重要である。 |