1.はじめに[*] 近年の北海道の山間部の国道では、短時間に多量の降雪により発生する乾雪雪崩が多発している。本研究では、北海道の山間部での乾雪雪崩時の通行止め解除時の判断に役立てることを目的に、雪密度(ρ)と積雪の剪断強度(SFI)の観測データを蓄積・解析して相関式を求め、新雪層最深部の雪密度(ρb)と新雪層厚(H)の計測により、短時間で定量的に積雪の安定度(SI)を求める手法を考案した。[*][*]2.研究方法[*]2.1 観測場所及び観測期間[*] 本研究では、実際に乾雪雪崩が発生しているR453支笏湖畔や大雪湖周辺の気象条件に近い、中山峠(標高約835m)と旭岳ロープウェイ駐車場横(標高約1、100m)の積雪断面観測データを使用した。[*]なお、観測は平成20年度、21年度、22年度にかけて行った。[*]2.2 測定項目および測定方法[*] 本研究では雪密度と積雪の剪断強度(SFI)を比較した。[*]ここで、雪密度計測では100cc角型サンプラーまたは計量秤一体型50cc角型サンプラーを使用し、一つの積雪層に対して3~5回以上の測定結果の平均値を測定値とした。[*]積雪の剪断強度(SFI)計測では、高さ4cm、断面積248.0cm2、重量83.8gのチタン製シアーフレームを使用し、3~5回以上の測定結果の平均値を測定値とした。なお、観測は、前日に多量の降雪があった時に行うように努めた。[*][*]3.研究結果[*] 本研究では、場所による雪質の違いがρ~SFI曲線に現れ、北海道の山間部の新雪~しまり雪の積雪は、新潟県十日町(山野井等、2002)の新雪~しまり雪、及びざらめ雪の結果よりもSFIは小さく出て、カナダ西部の山間部(Jamieson等、2001)の新雪~しまり雪の結果と良く似ていた。[*][*]4.考察[*]4.1 雪質による雪密度とSFI関係式の違い[*] 北海道の山間部の新雪~しまり雪の積雪が、本州ではなく、カナダ西部の山間部(Jamieson等、2001)の新雪~しまり雪の結果と良く似ていた理由は、十日町では0℃に近い湿雪のことが多く、粘着力も含めた粒子間結合力が大きいと予想されるのに対し、カナダ西部や北海道の山間部では低温環境のため、粒子間結合力が弱いためと説明される。[*]4.2 簡易密度算出方法の提唱[*] 積雪の断面観測結果に基づき、新雪層最深部の雪密度(ρb)に係数(k=0.6)を掛け、新雪層全体の平均密度(ρm)を算出する方法を考案した。[*]4.3 簡易密度算出方法を用いたSI算出法の提唱[*]θ=40°~50°の斜面では、sinθ×cosθ≒0.5なので、新雪層最深部の雪密度ρb(kg/m3)と新雪層厚H(m)の計測により、積雪の安定度(SI)を求める方法を考案した。[*]SI=SFI÷(W×sinθ×cosθ)[*] ≒ 0.01×ρb÷H[*][*]5.おわりに[*] 本研究により、これまで定量的に示すことが難しかった積雪の安定度が短時間に定量的に算出可能になるので、本研究は冬期道路の維持管理に有用である。 |