我が国の道路沿いには,小規模落石等に対する道路防災施設として,落石防護擁壁が数多く設置されている。これらの落石防護擁壁の中には,規模や経済性の外に用地の問題から管理者の敷地内で対応せざるを得ない場合もあり,待ち受け式擁壁となっている箇所も少なくない。現在,落石防護擁壁は直接基礎による無筋コンクリート製の重力式擁壁が一般的に用いられている。また,擁壁は一般に良質な支持層に根入れされていることが条件となっていることから,支持力が十分に期待できない地盤の場合には,支持力が期待できる深さまで掘削し,良質な材料と置き換える工法が多く採用されている。しかしながら,擁壁背面と落石発生源である斜面との間に大きな空間が期待できない場合には,置き換え基礎の施工に伴い,その斜面法尻を掘削しなければならず,斜面崩壊を誘発してしまうことが懸念される。[*]このようなことから,著者らは,斜面法尻の掘削を必要としない新たな工法として,基礎杭を擁壁内まで立ち上げ,鋼管杭の頭部を鉄筋コンクリート構造で結合する杭付落石防護擁壁(以後,杭付擁壁)に,落石衝撃力による壁体の損傷防止および基礎杭の規模の縮小化を目的とした,二層緩衝構造を付設する工法を提案している。今回,実規模試験体を用いた衝撃載荷実験の結果と既に現場への適用を行っている施工事例を報告するものである。 |