筆者らは、有機質肥料(無処理の家畜ふん尿液、メタン発酵消化液、曝気スラリー等)を採草用草地へ施用することによる、草地土壌中への炭素貯蔵効果の比較検討を行っている。本稿では一番草刈取後の施肥直後から初冬までの土壌呼吸量の観測結果を報告する。[*]1~3ヶ月で分解される易分解性有機物施用量が少なかったのは3種類の消化液であった。曝気スラリーおよび原料スラリーの易分解性有機物施用量は、消化液より多い結果となった。分解に時間がかかる難分解性有機物量は、消化液で最も少なく、曝気スラリー、原料スラリーの順に多い結果となった。[*]土壌呼吸量観測結果は、いずれの有機質肥料散布区も、施肥直後に土壌呼吸量が多い値を示した。これは、液体中に溶け込んでいたCO2ガスの揮散に伴うものと考えられる。施肥後の二番草生育期では、消化液区および曝気スラリー区の土壌呼吸量が化学肥料区と比べて増加している。しかし、有機物施用量の多かった原料スラリー区での土壌呼吸量は化学肥料区と同様であった。原料スラリーは他の有機質肥料と比較して固形分が多く、散布時には固形分が草地表面にとどまり、土壌中へ浸入しにくい。そのため、原料スラリー区での土壌呼吸量が他の有機質肥料区よりも少なくなったことが考えられる。 |