本研究では,積雪寒冷地における狭小幅員橋梁に対する幅員確保の方法として,FRP を用いた既設RC 床版の拡幅工法を提案した.また,FRP 拡幅床版供試体を用い各種載荷試験により,変位性状や応力性状,繰返し載荷に対する耐久性,静的耐荷力,破壊形態等の把握を行った.得られた結果を以下にまとめる.1) 本研究における床版拡幅寸法は,道路構造令等の基準類および北海道における橋梁幅員の現状に基づき,片側1.5m とした.FRP 拡幅床版の断面は200mm×200mm,板厚8mmの中空箱型断面とし,上下面へのFRP プレートの接着により,橋軸方向への断面の連続化を行う.FRP 拡幅床版は,張り出しブラケット上に設置した縦桁により支持し,既設RC 床版の鉄筋をFRP 拡幅床版内で定着することで両者を一体化する.2) 設計荷重相当による静的載荷試験において,100kNの載荷によりFRPに発生する応力は,FRPの材料強度を大きく下回る.また,既設RC床版とFRP拡幅部の一体性およびFRPプレートによるFRPセルの橋軸方向への連続性が確保されることを確認した.3) 定点繰返し載荷試験では,想定した繰返し回数の範囲で変位および応力に顕著な変動が見られず,本研究で提案するFRP 拡幅床版構造が繰返し載荷に対して十分な耐久性を有していることを示した.4) 静的耐荷力試験によると,FRP 拡幅床版供試体の最終的な破壊は,FRP 拡幅床版におけるチャンネル材と上下プレートの剥離によるものであった.破壊に至るまでは,FRP 拡幅床版と充填コンクリートのすべりの急増やFRP セルのずれは確認されず,接合部に明確な開口も見られなかった.また,破壊時であっても定着鉄筋は健全な状態であった.以上より,本研究で提案するFRP を用いた既設RC 床版の拡幅工法は,車道拡幅に対して高い適用性を有しているものと考えられる.今後は,主桁と張り出しブラケットの接合方法に関する検討や輪荷重走行試験による疲労寿命や疲労破壊形態の確認を行う必要がある.また,付属構造物に関する検討として,FRP 拡幅床版に設置する地覆構造や車両用防護柵の設置方法の検討,および性能検証を行っていく. |