冬期の気象条件下にさらされるコンクリート用水路では、水路背面土の地温が0℃以下となって土中水分が凍結し、その体積膨張によって発生する凍上力が、水路側壁を破損する大きな要因となっている。この凍上防止対策として現在まで行ってきた工法は、水路背面に予想される最大凍結深度以内の凍上性土を良質な切込砂利で置き換え、排水性を良好にして凍結現象を発生させないようにする【置換工法】を主流としてきた。しかし、近年は砂利で置き換える多量の土砂を建設副産物として処理しなければならないケースが多くなっており、また切込砂利のコストも高く、置換工法が用水路の建設コストの増嵩を招く要因になっている。このことから、水路の側壁背面に透水性断熱材(発泡ポリスチレン)を用いて断熱し、水路背面土を凍結させない【断熱工法】の採用を試み、水路背面の凍結深度、水路側壁の挙動および経済性などについて調査試験を行ったのでその結果を報告する。この断熱工法は、昭和52年に北海道開発局にて調査された経緯もあったが、断熱材(スタイロフォーム)が当時では高価であったことと不透水性が原因で凍上を助長することが確認され採用に至らなかった。最近、透水性の高い断熱材が開発され、コスト的にも置換工法と大差がなくなったことから再度、断熱工法の調査試験を実施したものである。調査試験は平成8年度に開始し、平成9年度には調査地点を変えて実施した。なお、この調査試験は北海道開発局が実施している『技術活用パイロット事業』として指定され、審議の結果、新技術として北海道全域にわたって活用・普及を図ることが承認されたものである。 |