戦後の復興期から高度経済成長期を経て近年に至るまでに、日本では国土基盤整備、産業育成等による経済成長と個人の生活レベルの向上を目指し、開発優先、発展優先の政策がとられていた。それら事業・政策の評価については、以前より様々な研究・試行がなされてはいたが、近年、上述した目的がある程度達成され、また環境問題の発生や情報公開の進捗など社会情勢が変化するのに伴い、人々により公共事業の費用対効果や再評価が議論されることが多くなってきたと思われる。これまで社会資本整備の便益評価では主にその利用価値に重点が置かれていた。今日マスコミ等で大きく取り上げられている環境問題に対しては議論・研究が活発になされ、その改善価値を経済的に評価する研究・試行もなされていたが、それらが政策に反映される段階までは進捗していなかった。地球規模の環境問題から地域が抱える環境問題まで人々が環境の変化に対して特に敏感に反応している現在、そのような評価を行い、人々の意識する環境の価値を認識し今後の事業実施に生かすことは、それに携わる行政側や一般の人々にとって重要な意味を持つであろう。そこでCVM(Contingent Valuation Method)調査が、以下に述べる「札内川の清流価値」などの環境質のような、価格あるいは市場が存在しない非市場財に対して経済的評価を行う手法であり、アメリカ合衆国において近年政策決定の際用いられ、また現在日本において調査が試みられている状況である。本論文は、建設省が毎年発表する全国1級109水系の河川の中で、これまでに5度清流日本一となっている札内川の清流維持の価値を認識するために流域住民を対象に実施した調査の結果を報告するものである。 |