北海道東部に位置する網走湖は、日本の湖沼の中で13番目の大きさで、面積32.3K㎡、最大水深16.1mの湖盆に2億4千万m3の水量を有する汽水湖である。網走国定公園の中心をなし、豊かな水産資源や自然環境を背景として、数多くの観光客に親しまれている湖あるが、近年、流域からの汚濁負荷の流入や海水流入の変動によって網走湖の水環境に大きな変化をもたらしてきている。当湖の特徴を以下に列挙すると①上部淡水層と下部塩水層の強固な2層構造を呈している。②湖上部の淡水は下層の塩水から塩分の拡散供給により汽水性を示している。③塩水層に蓄積された高濃度の栄養塩類が淡水層に拡散供給されている。④淡水層の栄養塩が藻類の増殖に伴う内部生産を助長し、強度な富栄養状態を示し、毎年のようにオアコ現象が見られる。⑤無酸素を呈する塩水層水が、強風時に表層へ浮上して、魚介類をはじめとする、様々な生物を斃死させる青潮現象がみられる。北海道開発局では、この富栄養化が進行している網走湖の水環境の回復を図るため、種々の対策に取り組んでいるが、本稿では、栄養塩の供給源となっている塩水層容積を小さくするため、小出水を利用し下層塩水層を上層淡水層に混合希釈し河川から海に排水する浄化手法について検討するものであり、塩水層から淡水層へ供給される物質の鉛直拡散フラックスなど「曝気連行拡散流下」について基礎実験の結果を報告するものである。 |