一般国道40号比布トンネルは、旭川市と比布町の境界付近に位置する突哨山の南側を通過している。新トンネルは、現トンネルから40mほど離れた箇所に坑口を計画しており、平成10年10月に工事に着手し、比布側から鋭意施工を進めている。突哨山は、ミズナラやシイノキなどの自然林の丘陵地帯であり、都市近郊の身近な自然として市民に広く親しまれている。また、この一帯はカタクリの大群落が見られる地域として知られている。カタクリの大規模な群生が見られるのは全国的にもめずらしく、春の開花時期には多くの観光客が訪れる。新トンネルの建設に伴い、地域の特性であるカタクリの群生に施工の影響が及ぶ可能性があると考えられたため、詳細な調査を実施し保全に向けて検討を行うこととした。まず、建設予定地において、カタクリを主体とした現状調査を実施し、カタクリを生息状態を把握した。調査結果より、新トンネルの旭川側斜面にはカタクリが広く分布しており、坑口の開削に伴い生息地の一部が消失することがわかった。施工による周辺環境への影響を緩和する手法として、移植による保護対策を確立するために試験移植を行い、保全の方向性を検討した。本報告では、トンネル建設予定地のカタクリ調査の結果と試験移植の現在までの経過を報告する。 |