わたしたちの生活環境において、形や色をぬきにして考えられるものはないと言ってもよい。また、同じ構造物でも形、色により私たちに与えるイメージは大きく異なる。最近、調和のとれた都市景観設計が特にクローズアップされている。小樽の景観にふれてみると、色内地区では明治初期から大正にかけて建築された石造りの建造物が古い街並をかたちづくっており、これらの建造物がこの地区の景観をつくり出している。また、小樽運河周辺は、道路整備により散策路や街園等が設けられ、周辺の石造り倉庫群との調和が景観をつくり出している。これら歴史的な建造物による都市景観が小樽のイメージとして定着しつつある。一般国道5号長橋バイパスの景観設計は、小樽の歴史的イメージを考慮しながら生活空間としての道路に親しみと潤いを与えることをテーマに、砂留トンネル出入り口、擁壁の壁面、歩道舗装、照明、緑化、そして横断歩道橋を含め景観設計を行い魅力的な都市環境をめざした。従来、横断歩道橋の計画にあたっては機能優先で考えられてきたが、街路景観の質を大きく左右する全体的形状は、周辺環境に調和し、そのデザインにおいても優れたものでなければならない。本報告は、一般国道5号 小樽市稲穂 砂留横断歩道橋について、横断歩道橋と周辺環境との調和、その形態と形状、色彩と質感などの景観に対する要因を考慮して計画、実施した例を紹介する。 |