近年の橋梁計画において、①建設コスト縮減、②合理的な耐震性能の確保、この2大テーマが要求されている。平成8年12月に改定された「道路橋示方書・同解説Ⅴ耐震設計編」の2章、耐震設計の基本方針では、『地盤条件が良好で、固有周期が短い多径間連続形式の橋では、免震設計の採用が望ましい』とされている。免震設計を採用すると、地震時、橋脚に作用する慣性力が抑えられ、橋脚柱に対する負担を軽減することが可能となるので、工費縮減方策の一つと考えられる。従来から、道路橋に免震設計を採用する場合には積層ゴムタイプの免震支承が使用されている。しかし、低温下(-20℃以下)における積層ゴムタイプ支承の剛性は常温での値より大きくなり、条件によっては地震時の慣性力が大きくなる可能性がある。北海道のように冬季、-20℃を越すことが少なくない地域において、免震設計や水平力分散設計を採用した道路橋を設計する場合には、剛性の変化が小さく、安定した減衰定数が得られる免震支承の選定が重要であると考えられる。北海道開発局で開発した鋼製リンク支承は、冬季間でも安定した免震性能を発揮できる、温度依存性が小さい免震支承である。本論文では、鋼製リンク支承の理論、鋼製リンク支承を採用した免震設計の手順、設計上の留意点について報告する。 |