近年、トンネル内覆工などコンクリート片崩落事故が相次いで発生し大きな社会問題となり、これ以降、点検・調査等に用いる新技術の開発が行われている。本研究は、目視確認や打音検査に変わる点検手法の一つとして赤外線サーモグラフィ法に着目し、その適用性について検証した。赤外線サーモグラフィ法は、物体から放射される熱赤外線エネルギーを検出し、その表面温度を平面的に映像化することによって物体内部の状態や性質を調査する非破壊検査の一手法で、コンクリートの浮きや剥離などを検出する診断方法として着目されている。既に吹付のり面や建物外壁の診断には、一部実用化されている。この場合、日射による温度上昇、夜間の冷気による冷却があり、健全なコンクリート部分と欠陥部分(浮きや剥離、空洞のある部位)で表面温度に差異が生じる。これをサーモグラフィにより判別するものである。一方、トンネルや覆道、床版下部などでは、日射を受けることがなく、温度変化に乏しい。このため、人為的に加熱して熱赤外線映像法によりコンクリートの健全度評価を行なう。そこで、加熱時間やその方法、熱伝達時間と検出可能な剥離深さについて、熱伝導解析による理論的考察、およびコンクリート模型を用いた検証実験を実施して、加熱式遅延計測による赤外線サーモグラフィ法の検討を行なった。以下、これらの結果を報告するとともに、道路トンネルでの実用性についても、提案を行なうものである。 |