北海道東部の大規模酪農地帯では、乳牛の増頭・規模拡大が進む中で施設整備の遅れから家畜ふん尿に由来する河川・湖沼等の水質への影響が懸念されている。このような背景から、平成11年度に着工した環境保全型かんがい排水事業「別海地区」における排水路整備では、排水路沿いに緩衝林帯として土砂緩止林を設置し、農地からの土砂流出防止と併せて河川等水質への負荷軽減にも配慮することとしている。農地と排水路の境界に配置される緩衝林帯による水質浄化機能に関しては、海外において多くの研究事例があり、その機能が確認されている。しかし、その水質浄化機構・機能は、地形・土壌・水文・気象など地域特性等と密接な関係があるため、機能評価のためには現地調査が必要である。このような背景から、釧路開発建設部ならびに(独)北海道開発土木研究所では、地区内に残されている排水路沿いの林帯を利用して、水質浄化機能の定量的な把握および設計手法の解明のための各種調査を継続している。これらの調査は、酪農地帯の水質改善に関わるものであるから、主として窒素やリンなどの水質項目に重点を置いている。この報告では、まず既往の文献をもとに、緩衝林帯が果たしうる役割について説明したあと、今年度までの調査結果について述べる。 |