近年、北海道の日本海沿岸では、長年にわたり藻場が減衰したまま持続し続ける磯焼け現象の発生、漁業関係者の減少及び高齢化等、沿岸漁業にとって深刻な問題となっている。この対策の1つとして、ウニを除去し摂餌圧の軽減によって海藻類の再生を図ることがある。この時、除去したウニの保管施設(水域)が重要になる。また、ウニの安定出荷を目的とした出荷調整用施設が求められることがある。これらの施設は保存するウニの水質条件を確保する必要があり、平成8、9年度に波浪を外力とした「蓄養施設一体型構造物」について、海水流動下のウニの生態及び波浪による海水交換能力の研究を行い、その結果を当研究発表会で報告した。当時の研究は、日本海側での冬季の利用を想定したことから、波浪が大きく干満差が小さい場合であった。しかし、今後の水産基盤の一体的、効率的な整備の推進に際しては、他の魚種や夏季、低波浪時の利用も想定される。一方、根室管内の温根元漁港の平成14年度事業に静穏度確保とウニの出荷調整機能を有する波除堤として蓄養施設一体型構造物が計画されている。この海域の自然条件は、低波浪で干満差1.4mと先の実験結果から、波浪による海水交換量を推定することができない。本報告では、温根元漁港で計画されている蓄養施設一体型構造物によるウニの蓄養を対象に模型実験を行い、低波浪時における生簀内の海水交換特性を検討したので報告する。さらに、この実験結果からウニを蓄養した場合の生簀内の溶存酸素収支について、シミュレーションを行い、ウニ蓄養施設一体型ケーソンの構造を、生簀内の溶存酸素収支と反射率の両面から評価した。 |