胆振海岸は、北海道の中央南部に位置し、太平洋に面した延長約29kmの漂砂海岸である。海岸沿線は、道央経済の中心的な地域を背後地にもつとともに、道南・道央を結ぶ国道36号線、JR室蘭本線が通る交通の要所となっている。しかし、従前から海岸侵食や越波による災事が多発していることから、近年施工が試みられるようになってきた人工リーフと呼ばれる広天端幅潜堤を設置して、沖合いで波浪を制御するとともに、それに伴う漂砂制御によって、面的に海岸保全を実施して行く計画がたてられた。広天端幅潜堤は、離岸堤のもつ波浪減衰機能と、潜堤の特徴である低反射率で自然景観を損なわない、という両者の長所を取り入れたものと位置付けることができる。海岸侵食対策として人工リーフ工法を胆振海岸へ適用するに当たっては、胆振海岸の代表的な海象、海底断面に対して、幅広潜堤による波浪減衰効果、堤沖側の反射液特性、堤内水位の上昇量等が2次元水理模型実験により調べられている。その後、計画の具体化に向けて、設置予定水深並びに堤体構造の一部変更や被覆材の選定のため新たな検討が必要となった。そこで、本研究では2次元模型実験により、新たな設置水深の潜堤に対して、被覆材として割石と異型ブロックを用いた場合の波浪変形特性を調べるとともに、堤体の安定および周辺地形の変化について検討を行なった。また、一般的な海底地形・波浪・構造物の各条件の組合せに対して、波浪変形を予測する数値モデルとして、非定常緩勾配方程式による波の変形の計算法について、人工リーフヘの適用を試みた。 |