近年、生活水準の質的向上が謳われる中で、人々の社会資本整備に対するニーズは、機能を優先したものから潤いとゆとりのある快適な生活環境の実現に向けたものへと移り変わってきている。すなわち、河川改修を例にとれば、これまで進めてきた治水対策を柱とした整備に加えて、水辺空間の在り方ひいては水辺のアメニティーに大きな関心を払った整備に対して、付加価値を見いだすようになってきている。他方、あらゆる地域を通じて国際交流が飛躍的に進展しつつある現在、従来からのいわゆる日本的意識とでもいうものにとらわれない国際水準の街造りの必要性についても問われはじめている。そのため、今後21世紀に向けて、これまで以上に水辺のアメニティーの向上などに中心となる課題を据えた、流域開発の推進を図ることが必要になってくるものと考えることができる。こうした視点から茨戸川流域の生振地域を見ると、その規模、都市部との間のアクセス性、さらにはこれまで都市的開発が及んでいないことなどから、我が国では他に例を見ない好条件下に置かれていることに着目できる。このため、本報告は生振地域を対象に、現在の河川改修という事業の枠を離れた観点から流域総合開発の可能性を展望することにより、21世紀に向けたリバーフロントの在り方を見いだすための基礎的な知見を得ようとするものである。 |