我が国の経済社会は、高齢化、情報化等大きな基調変化の中にあり、今後成熟した社会に向かう過程において「安全」に対する価値観が高まり、自然災害による人命・財産の損失について高度な意識が形成されることが予想される。しかしながら水防に関しては「河道改修が進み堤防が完成したので、水防活動はあまり重要でない」といった認識があり「水防」というよりは「水害」に対する関心が低くなってきていると言わざるをえない。こうした現象は、従来水防活動が持っていた治水上のウェイトがハードな治水施殴の整備へとシフトしてきたため、住民の意識しないまま水防意識の低下をもたらす結果になったと考えられている。水防災マップは洪水災害の危険性を知ってもらうとともに、水防意識の回復を目的とするものである。これまでにも水防災に関するマップとして浸水実績図がある。これらのマップは浸水状況が静的に表現されているため、災害が発生した場合の水防活動や避難するための資料として活用されない場合が多い。本研究では従来の静的な浸水状況に変わって動的な浸水情報(浸水の時間的変化)をマップ上に掲載するための一試案として、モデル河川流域を対象に簡易な氾濫モデルによる水防マップの作成に関する検討を行った。 |