昭和63年12月16日、26年ぶりに噴火活動を再開した十勝岳は、144名の犠牲者を出した大正15年5月の泥流災害の記憶を現在に蘇らせ、火ロに最も近い白金温泉街の住民は127日もの避難生活を強いられるなど上富良野、美瑛町などの関係住民を泥流の脅威にさらした。火山地域における防災対策は、ダムや遊砂地などの構造物対策とともに、いかに災害の発生を未然に或いは迅速にとらえ、効率的に避難するかが重要である。とりわけ噴火に伴う火山泥流は、流速、流下範囲、移動土砂量において通常の土石流をはるかに凌ぐ規模のものであり、かつ噴火規模の予測が非常に難しいため、大規模な構造物群を整備しても決して十分な安全牲を確保できるとはいえない。ダム群を整備するために要する長い期間を考えれば、まず的確に泥流発生情報をとらえ、迅速に伝達し、避難を完了させるシステム作りこそ最低限人命だけでも守るという観点から優先されるべきであると考える。噴火から1年が経過し、現地では砂防ダムの建設が進められている一方で、泥流感知センサーや監視カメラ、雨量計などの泥流監視のための情報システムの整備も着実に実施されている。本検討では、これらの情報システムの効果や問題点を評価し、警戒避難対策を充実していくためのシステムの在り方について考察した。 |