本道の酪農は、その土地条件を生かし、欧米型の農業を取り入れ、家畜の飼育形態の多頭化、集団化による経営の安定化を目指して、規模拡大を図り、大きく成長してきた。その結果、これら家畜から多量に発生するふん尿の処理が有機、無機物の循環系を安定させるうえからも、大きな意義があるばかりか、生産量の低減や、省力化といった経営の合理化の観点と、農村環境整備の面からも重要な役割を持つものとなってきた。しかしながら、現状の家畜ふん尿の処理方法は、施設規模及び酪農経営規模にもよるが、一般的に固液分離方式が主流となっている。この為、飼育頭数規模が、大きくなるにつれ膨大な量のふん尿が畜舎外へ搬出され、その堆積場所とその処理に問題が生じている。そこで、ふん尿を省力的に農地へ還元させる肥培かんがいが、新たな方法として普及し始めている。ただ、この方式に於いても地域の経営実態との整合の面から、いくつかの課題を残しているのが現状であり、その内容も、それらシステム全体の構成によって様々である。本検討の目的としては、農家の肥培かんがいシステムを基に、試験圃場を設置し、肥培かんがいを直接農家に体験してもらう事により、その効用性、省力牲、経済牲のデータを収集分析し、既存文献との検証を行っていくことと、その酪農経営体系に適合するシステムへの施設の改善改良を推し量ることにより、肥培かんがいシステムのより一層の普及促進につなげることを主としている。 |