国営総合農地開発事業「標茶西部地区」は農地造成工事と畑かん施設(肥培かんがい)工事を抱き合わせ、昭和53年に着工し、現在に至っている。本事業は着工以来、十数年を経るに至って、農地造成工事とそれに伴う基幹施設(道路等)は80%以上完成し、畑かん施設工事においても幹支線の用水工(雑用水も含む)は100%完成し、受益者に対し、既に用水の供給を行っている。しかし、畑かん施設の中の末端施設の設置は平成元年度まで16戸(20%)未満であり、他工種に比して非常に立ち遅れている現状となっている。このことは、畑かん施設の中で基幹(用水工)は完成したが、末端施設が未完で、施設の有効利用がなされていないことになっている。今後、畑かん末端施設の進捗に向けて鋭意推めて行くが、その見通しは非常に難しい。これは、末端施設費が多大にかかることから、一定の経営規模以上の受益者でないと、施設を設置してもメリットがないということや、受益者の中に休農、離農が余儀されていること、又、畑かんに対する受益者の理解程度も一律でないことに加えて、農業情勢の厳しさで経営内の設備投資を控えている農家が多くなってきているということからである。これら地区の現状を把握するため計画変更調査等を実施した結果から、末端施設の設置可能戸数は当初計画から大巾に下回ることが予想されている。この状況は今後、余程の情勢の変化があっても変ることはないと思われる。従って、ここで問題となるのは、当初計画で106戸で肥培かんがい用水を計画していたのが、半数以下に減少するということになると、当初計画の用水量が余剰となって来るということになる。しかも、用水工の基幹施設(取水~配水施設)は、当初計画の規模で完成しており変更は出来ない。以上のことから、今回当初計画に従って建設された施設が、地域全体を通して、事業完了後に予想される用水工の利用実態とどのような関連で推移するかを推定し、これらの利用と管理に対し問題の提起と課題解決の方向を検討し、その結果を報告するものである。 |