港湾は、陸域と海域の接するところであり、地域経済の発展を支える基盤施設の一つとして、物流活動や産業活動を支え、また、人々が働き、憩い、生活する貴重な空間を提供してきた。そして、港湾は、そこに港湾建設関連産業や港湾物流産業の新たな需要を創出し、臨海性の産業活動の立地を促進することで、人々に労働の場を提供し、また、マリーナ、緑地などの整備により、憩い、生活する場を提供してきた。こうした活動は、更に、関連産業活動を直接的・聞接的に刺激することで、その港湾所在都市を中心とした地域の発展に対して多大な貢献をしてきたものと考えられる。いま、四全総(昭和62年6月間議決定)でも、「多極分散型の国土形成」が目標とされ、全国それぞれの地域の特色ある開発が期待されている。一方、21世紀への港湾(昭和60年4月、運輸省港湾局)の基本目標の一つとして「総合的な港湾空間の創造」を掲げ、今後の港湾整備を進めていこうとしている。本報告は、竹下内閣の「ふるさと創生」にも代表される地域開発ブームにある現在、これら国の政策のもと、総合的な港湾空間の創造を通して、港湾を核とした地域開発を進めていった場合に、その港湾整備、港湾活動が地域に及ぼす影響のメカニズムを明らかにすることによって、地域開発における港湾整備の意義を確認し、今後の北海道港湾整備事業を進めていく上での基礎資料としようとするものである。本報告では、「港湾整備の地域への波及効果」という検討課題について、『港湾整備の要請→港湾建設事業の実施→港湾施設の完成→供用』の過程で発生する様々な経済活動を通して発揮される各種の波及効果を体系的に整理することにより、地域における港湾開発の意義について確認することを目的としている。この目的のもとに本報告では、最初に「港湾整備の要請」=「港湾機能を必要とする要請」が地域社会経済との関係で発生することを明らかにし、次に「要請の充足」=「地域社会経済への効果」という型で発揮される波及効果の項目を整理した。続いてこれらの項目毎に効果が発揮されていく過程を整理・体系化し「開発の効果」→「開発の意義」を確認するための推計資料として概念的に整理を行った。最後に、この中から、港湾整備事業費の地元負担金が及ぼす自治体財政への影響について具体例に基づき述べる。 |