胆振海岸は、北海道の南西太平洋沿岸に位置し、直轄事業区域は、東側起点は苫小牧西港、西側終点は白老町北吉原を流れる二級河川敷生川までの約29キロメートル間である。この地区の沿岸線は、北海道の経済、社会活動の動脈をなす国道36号、JR室蘭本線および道央自動車道が走り、苫小牧・白老にかけて工業、沿岸漁業が盛んである。また、背後には、支笏洞爺国立公園を核とした観光リゾート地域が広がり、さらに近年では地域振興のための大規模リゾートなどの大プロジェクト計画が進められているなど、北海道の中でも経済・社会面におけるポテンシャルの高い地域となっている。しかし、この海岸線は、台風や低気圧の通過に伴う暴風波浪の襲撃の際に、直立護岸は吸出しや転倒の災害が発生し、住家を脅かし、沿岸住民の居住環境がすこぶる悪化している。海岸保全事業としては、昭和33年から北海道により補助事業で線的防護施設である直立護岸を主体に実施してきたが、昭和63年度から直額事業でスタートし、効果的な面的防護施設である人工リーフ工法を主体に事業を進めることとなった。人工リ一フ工法の設置に当たっては、設置予定箇所が優良な水産漁場であることから、漁業関係者から厳しく反対され局面は難航し、水産関係者の合意が得られない限り工事の着工が出来ない状態となった。漁業関係者との同意を得る方法としては、従来から取られて来た漁業損失補償方式とこれまでに公共事業では実施例のない漁業機能補償方式が考えられる。直轄胆振海岸保全事業については、漁業者の生活、地域の発展及び国土保全的見地から、経済的で将来性が見込まれる漁業機能補償形式によることとした。漁業機能補償方式には、人工リーフの構造や設置場所等を工夫して成る、地域の安全牲と漁業生産・安全操業の両立を可能とする、わが国最初の『水産協調方式人工リーフ』を考えた。水産協調方式人工リーフの設計は、模型実験を繰り返しながら海岸保全及び水産に関する技術的検討をとりまとめ、短期間のうちに、水産関係者の同意を得て、関係者の期待をのせ平成元年度後半に着工と相成ったものでここに、その技術の概要について発表するものである。 |