現在、都市化が急速に進展する中、都市の中における貴重な水と緑の空間として河川空間の存在が見直されてきている。この河川空間は社会資本の機能の面から考えると、治水機能(洪水・浸水などの防御)、利水機能(用水の安定供給)、空間機能(防災、レクリエーション、景観修景形成、自然保全)、地域環境改善機能(地域冷暖房、スーパー堤防)などに分類され、それぞれが連関して社会において重要な役割を果たしている。しかし、このような多岐にわたる機能を有しているのにも関わらず、河川空間が社会において正当な評価をうけているとは言い難い状況にある。これは、河川及び河川空間整備が地域社会に与える効果の計量化が既存の概念では困難なことにも一因があると考えられる。本研究においては、地域づくりにおける河川及び河川空間整備の意義を明確にするために、流域住民に対するアンケート調査をもとに、河川及び河川空間整備の地域波及効果の計量化を試みた。前年度において、豊平川中流域の住民を対象としたアンケート調査を行い、多属性効用関数(MUF)を用いて都市河川敷及び水辺利用といった河川環境が地域に与える経済的効果の計測・評価を貨幣タームで行った。本年度は、前回得られた結果を河川空間までの距離、アクセス手段などを考慮してさらに精査した。また、治水・利水・親水機能を含めた総合的な計測・評価手法を開発するために、河川及び河川空間整備に関する多様な項目を抽出し、評価項目の階層構造化を行った。 |