最近の調査報告の中で、特に治水事業の効果が算定についての報告がかなり見られるようになってきた。このような効果量に関する調査は一般に治水経済調査と言われ、昭和28年策定された「治山治水基本対策要綱」を契機に当時は他の事業の枠の決定の根拠の資料として各河川で実施されてきた。その後調査の体系化の必要性の高まりから昭和36年に「治水経済調査方針及び水害区域資産調査要綱」が示され、それ以降若干の改正が加えられ昭和45年12月調査方法が改正された「治水経済調査要綱」が現在の要綱として使用されている。これらの調査は、いろいろな問題点を抱えながらも当時の他事業との比較から地域間あるいは河川間、そして最近に至っては、段階施工計画の名のもとに同じ河川の中の地区間のレベルまで、調査範囲が変わりより精度の高いものが要求されてきていると思われる。それに対応して効果量算定に関していろいろなモデルが提案され、調査の新しい方向を模索していると思われる。しかし、これらの新調査に対応しなければいけない。流域情報の整備については、最近のエレクトロニクスの進歩、OA化の進行にもかかわらず必ずしも要求に答えてはいないように思われる。本報告では、既成の「治水経済調査」「氾濫区域内資産調査」「河川現況調査」など流域情報を扱っている諸調査の概略にふれ、問題点をあげて、効果量算定に関与する流域情報の統計処理の新しい方法を提案するものである。 |