沿岸海域の環境は陸域及び河川の環境を反映しているが、お互いを結びつける媒体は水及び、水によって輸送されている土砂と考えられる。洪水時に海域に大量に流出する土砂には、リン、窒素等植物プランクトンの成長に欠かせない栄養塩類が含まれており、海域の水質・生息環境との関わりが大きいことが想像出来る。洪水時に河川から流出する土砂はウオッシュロード等粒径の細かな成分の比率が高いが、その多くが凝集作用等によって河口周辺の沿岸域に急激に沈降する。このため、河口周辺海域はこれらの粒径の細かな懸濁物質の影響を大きく受けることになる。懸濁態リンは、土壌、河岸土等と結合し、もしくは有機態として存在しているが、洪水時には懸濁物質として海域に流出することとなる。洪水時には河川のリン濃度は上昇するが、溶存態リンの濃度上昇は余り顕著ではなく、その原因は洪水時に多く流出するSSに含まれる懸濁態リンである。しかし、懸濁態として海域に流出するリンは、無機態リンについてはその結合形態により海域で全てが利用される訳ではなく、また有機態リンについても懸濁態に占める比率によって海域に与える影響には違いが生じる。従って、海域に与えるリンの影響を把握するためには、総流出量のみならず海域において循環可能な量を把握することが必要である。このことから石狩川、尻別川、鵡川において洪水時に懸濁物質を採取し、粒径毎に分画した試料について化学的な結合形態を詳細に分析し、海域に与える影響について調査した。また、これらの河川において実施されている定期水質観測データからリンの流出特性について考察を行った。 |