様々な目的の下に作り出されてゆく構造物や施設が、機能合理性という単一の目的だけでなく、その構造物が本来目的とする機能以外に、そのものの存在がその場や周辺の機能に対して与える影響についても論じられるようになって久しい。特に、国民の税金によって国民のために行われる公共事業においては、社会の要請に対応した事業が求められるため、現在北海道開発局を含む各省庁・機関で各種様々な試みが行われている。1988年12月大雪山系の十勝岳が26年ぶりに火山活動を再開した。同山はこれまでにも30~40年周期で噴火を繰り返しており、1926年の噴火では大規模な火山泥流を発生し、死者・行方不明者144名を出す大災害を引き起こしている。この1988年噴火をきっかけにして、十勝岳山麓では火山泥流対策事業が強力に進められることになった。この火山泥流対策事業においても、前述の構造物や施設が本来の目的以外に周辺に与える影響についての検討が行われ、各種の工法が試みられた。本稿では構造物や施設に対する要求の変化という社会の流れを確認し、それらの要請に対応するための試みを行った事業の一例として、十勝岳火山泥流対策事業を紹介し、若干の考察を加えるものである。 |