大水深海域はその厳しい気象、海象条件から今まで利用密度が低かったが、波浪エネルギー資源の場、海洋レクリエーションの場、鉱物資源の場などとして近年注目を浴びてきている。大水深海域に秘められたこのような資源を有効に利用していくためには、その開発により積極的に取り組んでいくことが必要になるが、具現化していくための手段として海洋構造物は不可欠なものになると考えられる。一般に海洋構造物を設計する場合は作用波力の算定法が問題となるが、寒冷海域に施工する場合には、着氷に伴う作用波力・風力受圧面の増大、静的荷重の増加、動的応答性の変化等についても考慮する必要がある。特に北海道周辺の海域においてはオホーツク海を中心とする流氷襲来時を除き、外海では海水面の結氷がほとんど生じないことから、着氷による波力・風力受圧面増大の影響は大きいと考えられる。構造物への着氷に関しては、Lozowski,Horjenらが円柱部材の着氷を中心に理論解析を行っており、また最近では堀部らが室内実験により様々な試みを行っているが、それらを検証する現地データは不十分なのが現状である。そこで港湾研究室では、1988年より留萌市黄金岬沖に設置してある実海域実験構造物を用いて着氷調査を実施している。本報では観測施設を紹介するとともに、これまで得られた3ヵ年のデータを整理し、着氷の形状的特徴、気温、水温、波浪などの周辺要因と着水との関連性について述べる。 |