厳寒期の北海道においては、オホーツク海側はもとより、寒冷域に位置する一部の港でも港内結氷が発生し、流通、漁業面に影響をあたえている。こうしたことから、近年、港内結氷の防除対策方法が種々研究されている。一方増養殖場造成の立場では、結氷防除と結氷の有効利用(プランクトンの育成効果、消波効果あるいは断熱効果など)の両面の研究が必要と考える。いずれにしても、結氷問題の検討には、現地における結氷の発生、成長のメカニズムを知る必要がある。そのためには、結氷の発生検知や氷晶層(氷晶集合が層状を呈している意味とする)の増厚、結氷厚などの高精度計測が必要であるが、この種の現地用の自動計測手法例は見あたらない。そこで、蓮葉氷や薄氷板状に至るまでの、厚さ0~5㎝程度の結氷初期の氷(世界気象機構の定義による海氷の分類もあるが、ここでは初期結氷と記述する)を対象とした現地用氷厚計の試作研究を行うこととした。その第一歩として、超音波パルス反射法の組合せによる氷厚計測法を選択し、その具体化のための基礎的技術について検討を行い、つづいて、超音波センサ部をブイ構造に取り付けた方式を試作した。その後、試作機による現地氷厚計測試験を行った結果、出力にパルス性雑音が記録されるという間題(後日原因判明)があったが、海表面の状況からは推定できなかった複雑な経緯をへて、結氷が増厚する過程が記録波形から判断し得るなどの結果が得られた。これらの結果から、現地の氷厚計測の有用な一法として超音波方式の実用化の見通しが得られたので、ここに、全体を通して、その概略を述べる。 |