これまで莫大な資本投下によって建造されてきた土木構造物は、社会活動の基盤として益々その重要性を増している。土木構造物が、構造物としての機能を果たすことができなくなった場合の社会的損失は計り知れない。従って、社会資本としての土木構造物を適切に維持管理することは、現在の複雑な社会システムを効率的に維持することと同義である。コンクリートは他の建設材料に比べて耐久性に優れた材料であるとされてきたが、最近、コンクリート構造物の早期劣化に関する多くの報告がなされるようになってきた。これらのコンクリート構造物の劣化の原因は、塩化物によるコンクリート中の鋼材の腐食、凍結融解作用、化学物質の作用、およびアルカリ骨材反応などである。現在、これら各々の間題に対する設計段階における対策は、それなりに確立されていると言える。しかしながら、既設コンクリート構造物の劣化を適切に評価することは難しく、体系的な劣化診断法の確立が望まれている。最近は、コンクリ-ト構造物を有する各機関において、劣化診断のためのマニュアル作りの努力がなされているが、まだ一般的なものとなっていないのが現状である。このようなことを背景に、本研究では、コンクリート構造物における問題発生から処置に至る一連の過程の体系化を試みた。 |