近年、材料の高強度化や設計理論の高度化が進み、比較的剛性の小さい橋梁が作られるようになった。一方、車輌の大型化、交通量の増大に伴い、一般歩行者に不快感を与えるような橋梁が出現するようにもなってきた。我が国では、松本らの研究によって、歩道橋における不快感を与える振動は、歩道橋の1次固有振動数が大きく影響することが判明した。さらに小川らの橋梁における人間の振動感覚および振動恕限度に関する研究により、人間の感覚が調査に対する先入観念などによって変化することが問題点として指摘されている。一般国道5号七飯町西大沼に架かる大沼こ線橋は、建設地点が大沼国定公園内にあることや湖水に沿って通過する函館本線の新大沼トンネル大沼側坑口上方に架橋されることもあり、構造特性・経済性など総合的な比較検討を行った結果、下路式ランガー桁一連で渡る橋梁形式が選定された。下路式ランガー桁形式は、全国的にも多くの実績があり、またアーチリブの格点がピン結合で軸力のみを伝達する構造になっていて断面形状を小さくできることから、経済的な形式とされている。しかし、ローゼ桁やトラス等の形式に比べて全体剛性が小さくなる傾向にあるため、揺れやすい構造形式ともいわれていることもあり、函館開発建設部において本橋の車輌通過時における歩行者の有感振動について解析・検討したい。しかし、実橋では補剛材や2次部材、格点等の影響により、橋梁の振動性状が理論値と異なる場合があるため、当研究室では、実橋における車輌走行時の振動感覚について調査し、本橋における不快度および解析結果の妥当性を検討することを目的として、同橋の振動試験を行った。本文では、有感振動の面からみた振動試験の結果を報告する。 |