近年、我が国の経済的繁栄を背景とした国民生活の質的向上がなされ、国民の意識も変化して行くなかで、従来「早く、安く、大量に」を目標に進められてきた土木部門の公共事業に対しても質的向上を求める声が上がり始めて久しい。河川事業においては、洪水を安全に流すことのみに囚われた河川改修事業に対して「川をコンクリートで固めるな!」という声に代表される河川事業に反対する動きとなって現れた。現在、河川事業に対しては改修工事の必要性に対する疑問が投げかけられ、実施される事業に対しても、人や鳥、魚、昆虫や植物、そして周辺環境への配慮を強く求められている。治水上の機能を確保しつつ、現在の日本ではすでに貴重なものとなってしまった各種の機能を持つ水辺空間を大切にし、それらの機能をできるだけ疎外しない、むしろ水辺空間の持つ機能を増進させ、充実させるような事業を進めていくことは河川行政にとって重要な課題であり今後その重要性はますます増していくものと思われる。今回取り上げた「水と緑の公共空間整備」は平成4年度から実施される事業で、これまで切られる一方であった河川空間内の樹木に注目し、樹木を積極的に植栽することで生活に密着した水と緑の空間を整備しようというものである。河川敷地内に樹木を植えることにより、景観上の効果はもとよりその他にも防風や防雪、堤防強化などの効果を発揮することも期待されている。平成4年度には札幌市の北部を流れる石狩川水系創成川と石狩川本川の左岸対雁地区において事業実施の予定である。本稿はこの2地区について取り上げ、水と緑の公共空間整備についてできるだけ具体的な検討を行い、若干の考察を行うものである。 |