北海道は、日本の食料とエネルギーの供給基地として重要な役割を果たすようになり、多目的ダムの建設等による農工業用水の計画的な供給や電源開発が、工業生産の向上や原料立地型工業の発展に寄与してきた。また、産業構造が高度化するにしたがい、自然の荒れ地から農地へ、農地から市街地へと土地利用が急速に変化し、特に大都市圏の発展は目覚ましく、氾濫域の資産集積に伴う治水事業及び利水事業の重要性が一段と高まっている。一方、国民の意識は単なる量的な豊かさの追求から質的な豊かさ、すなわち、うるおいやゆとりを求める方向に変化しつつある。地域づくりにおいても豊かな自然、美しい景観、歴史や文化に対する関心が増大し、その地域の立地条件、特長を考慮した開発が進められている。河川事業においても治水、利水一辺倒から、それらを中心に流域を考慮した利用促進型の事業展開が進められている。また、「水と緑のあふれるオープンスペース」という言葉に代表されるように、河川空間に豊かな自然の保全あるいは再生・創造が求められているのも事実である。近年、河川において開発と自然保護という相反する事業展開が行われようとしている。そこで、これら2つの事業の共存が求められるようになってきている。本報告はこのような社会情勢の中で、今、治水事業がどのような点に着目し事業展開していくべきか、事例をもとに考えたものである。 |