元来、護岸は河川、海岸などの保全施設として重要な役割を果たすべくものとして木工沈床、蛇篭、コンクリートブロック等、有史以来種々の工法が時代の潮流とともに推移してきた。とくに、北海道開発局においては、冬期間の施工性を考慮してプレキャストコンクリートブロックの製品開発や護岸の安全性、施工性、河川環境に配意して昭和49年に「護岸根固工設計指針」、昭和55年に「護岸法覆工法計指針」を策定し、恒久護岸としての技術開発が行われ、その結果、河川環境整備や災害復旧事業等の円滑な推進がなされ、今日の安全性の高い河川保全施設の整備が図られてきた。近年、国民の意識は単なる量的な豊かさのうち追求から質的な豊かさ、すなわちうるおいやゆとりを求める方向に変化し、河川に豊かな自然と人間生活の共生が求められるようになった。また、近年では、深刻な大都市圏の一極集中現象が進み、生活の豊かさやゆとりが感じられない状況が増幅されてきており、「公共投資基本計画」は21世紀に向けておおむね430兆円をもって日本の国土全体にわたり生活の多様化、個性化に対応した社会資本整備、生活環境の総合的な整備をおこなっていくこととしている。一方、我が国の建設産業は、国民総生産の2割近くに相当する建設投資を担い、高齢化社会の進展するなかで建設産業における労働力不足、熟練工不足による技術力の低下、労働災害の多発など憂慮すべき現状にあり、建設省は「構造改善推進プログラム」を策定して建設産業政策に取り組んでいるところである。以上の背景から現在護岸工法の課題としては①より安全性を高めること、②自然環境との共生を図ること、③工事の生産性の向上を図ること等が社会的潮流として求められている。そこで、護岸(根固を含む)工法に対して、筆者等は①より安全性の高い護岸工法の追求、②鳥、魚、人にもやさしい、多自然型川づくり(アクアグリーンストラテジー)への挑戦、③施工合理化等についての検討をおこなったものである。 |