わが国は、生活における利便性を高めるためにエネルギー多消費型になっており、民生部門のエネルギー消費の伸びは近年著しい。一方、地球環境問題に代表されるように生活環境や自然環境を重視する潮流の中で、自然(地域)資源の効率的利用・活用が急務となっている。本調査は、このような社会情勢のなかでこれまで十分な有効利用がなされていない資源・エネルギーの1つとしてダム湖底部に形成される恒温水帯に着目し、また日本の食糧供給基地でもある北海道においては農業分野への貢献が地域として効用が大きいことから農産物の栽培・貯蔵への有効利用について、ダム建設等に伴う廃止隧道の有効利用と併せて検討するものである。さらには、農産物以外におけるダム湖特性の活用方策についても検討し、ダム周辺の地域社会への貢献と今後の水資源開発事業に質することを目的としている。調査においては、桂沢、金山、豊平峡、漁川ダムの4つのダムについて水温状況の実態を把握し、かつダム周辺における鉄道・国道等の廃止隧道の現況を捉えたうえで、農産物の栽培・貯蔵条件、恒温水帯・恒温空間の利用技術の動向を整理し検討品目を選定した。そして、栽培・貯蔵におけるエネルギー利用形態を推測して具体的な絞り込みを行い、恒温空間としての廃止隧道および恒温水帯の利用方策をモデル計画的に策定し、事業の可能性を検討した。 |