近年、農業用水路のパイプライン化が進行するなかで、軟弱地盤における埋設管路の施工例が増加している。軟弱地盤に埋設される大口径パイプラインは用地確保の問題から矢板土留施工が多い。軟弱地盤中のパイプラインの挙動に関しては、原地盤の特性や基礎材・埋戻し材の性質・締固め状態も大きな影響を与えるが、矢板土留施工により可とう性パイプを埋設した場合には、矢板の引抜きによってパイプの変形、沈下が進行することに起因した間題点も報告されている。とくに、大口径可とう性パイプの場合、パイプ周辺土の相互作用の面からもパイプ周辺土の力学特性は重要であり、現実の施工規模・条件下におけるパイプの土中挙動、作用土圧の変化などを踏まえた設計が重要である。現在、農林水産省の土地改良事業設計基準水路工(その2)では、可とう性パイプの横断構造設計には米国開拓局の研究成果をもとにした設計値や埋戻し材が推奨されている。しかし、埋設方法は素掘施工を基準としており、矢板施工によって埋設されたパイプラインについては十分な資料が無いのが現状である。すなわち、設計上重要な因子である受働抵抗係数(e’)の値やたわみの管理基準等の早急な検討が望まれている。今回、軟弱地盤におけるパイプライン構造設計の基礎資料の蓄積を目的として、国営共栄近文地区共栄幹線用水路に試験区を設け、矢板土留工法により埋設した可とう性パイプ(φ1800㎜鋼管)の土中挙動について現場実験を行った。本論では、現場実験のなかから施工過程におけるパイプの変形、作用土圧の変化を示し、矢板引抜きによるe’、の変化について検討した。 |