抜海漁港は天塩平野の北部抜海岬に位置し、対岸に利尻・礼文島を望み、稚内市中心部から15kmと至近距離にある第4種漁港である。当漁港は、対馬暖流により流氷の影響を受けない不凍港で、かつ明治以前からこの地方有数の好漁場で知られ、流通・陸揚げの根拠港および稚内港の副港的役割も含めて、地域社会の発展に寄与する漁港としての整備を鋭意進めている。一方、我が国の水産業をとり巻く社会情勢を考えると、国際的な200海里体制への移行、並びに海洋資源保護という立場から、その生産体制の再編成を余儀なくされるに至った。それに伴い、漁業根拠地としての漁港に求められる役割もますます高度化・高質化が要請される。また近年、国民の食生活はグルメブーム、健康志向にのり高品位・希少価値を求める傾向に変化してきた。これらの対応として、最近注目されつつあるのが増養殖漁業である。そこで、当漁港では第8次漁港整備計画の整備目的および漁港法の改正に伴い、活魚を中心とする漁獲物の安定出荷を主眼に置き、大量漁獲時の一時蓄養、他地域の端境期や需要期までの蓄養、市場などに出荷するための一定量の蓄養等により、価格の安定を図る目的で蓄養施設水面整備を計画した。ここでは、主として海水交換型二重防波堤を採用するに至った経緯を、その特殊性から生じる問題点およびその検討方針や解決策など、計画から設計を行うまでの過程について報告するものである。 |