釧路港東港区中央埠頭-7.5m岸璧は、建設後25年以上経過し鋼矢板壁の腐食が進み危険な状態となったため、平成元年度より岸壁の改良工事を進めている。平成2年度には5号バースの改良工事に着手することとなったが既設岸壁の背後約15mの位置に上屋があり、また前面水域は港湾区域と河川区域の重複区域となっており河川管理上岸壁の前出し改良が不可能であるなど施設築造空間が限られていた。さらに、軟岩からなる支持層が比最的浅い位置に出現していた。これらの制約条件から、既往の構造形式での施工が困難であったため、運輸省港湾技術研究所と新日本製鐡㈱により共同研究中であった新工法である『「水中ストラット式岸壁』を設計・施工することとした。裏込部を含まない地盤-鋼構造系の力学的挙動については、すでに共同研究者において実施された実大規模構造体水平載荷試験などの一連の構造試験によって解明され、それに基づく設計法の提案がなされており、裏込部を含む地盤-鋼構造全体系の力学的挙動の調査・解明と設計法の検証が待たれていた。このため.北海道開発局の技術活用パイロット事業として本施設への導入が採択され、本工法に特有な工種に関する施工性の確認を行いながら、当該岸壁の一部において裏込部を含む地盤-鋼構造全体系ととしての力学的挙動を計測調査し、構造物の安定性の確認と設計法確立のための基礎質料を得ることとした。この計測調査の計画および計測結果の評価は、(社)寒地港湾技術研究センターに佐伯浩北大教授を委員長とし、大学、運輸省港湾局・港湾技術研究所、北海道開発局、新日本製鐡㈱等の関係者により構成される『釧路港水中ストラット式鋼製岸壁技術検討委員会』を設置し行なった。以下では『水中ストラット式岸壁』の力学的挙動に関する計測結果と理論解析との比較および設計法の妥当性について報告する。 |