抜海漁港は宗谷岬の日本海側に位置する第4種漁港で、対馬暖流のため冬季間でも結氷せず、加えて漁港周辺海域には豊富な漁業資源が賦存する優良な条件を備えた漁港である。近年の活魚需要の増大とも相まって、第8次漁港整備長期計画の中で雄冬漁港とともに全国に先駆けて蓄養水面整備が進められているところである。当漁港の整備においては、かねてから冬期間に北西側から来襲する激浪の対策と、相対する南側からの沿岸流で供給される漂砂の対策が枝術的な課題になってきた。今般、冬期間の激浪を直接受けることになる現港の北側に蓄養水面を整備するに当たり、上記激浪対策及び漂砂対策に加えて、蓄養水面内の特に夏場の高水温時の水質保全・海水交換が新たな技術的間題に挙げられるに至った。3種の異なる課題に対処すべく模型実験を含む技術的な検討の結果、蓄養施設水面の外郭施設の構造形式は傾斜堤とスリットケーソンの二重防汲堤構造が採用された。上記のとおり、当蓄養水面の整備では。水質保全・海水交換が重要課題の一つであるが、蓄養水面整備は昭和63年4月の漁港法の一部改正を受けて第8次漁港整備計画で初めて整備される施接であるため、蓄養水面の環境基準はなく、その検討がいそがれている。水産土木研究室では蓄養水面の環境基準の検討に資することを基本目的とし、あわせて、蓄養水面の水質保全・海水交換性能を評価するための基確データ取得を目的として、抜海漁港の現港内外及び蓄養水面予定水域について、平成元年度から環境条件を把握するための現地調査を実施しているところである。本報告は、平成元年及び2年の調査概要と結果概要をとりまとめたものである。 |