わが国の水産業をとりまく環境は、200海里体制の定着、沖合・遠洋漁業の大幅な漁場喪失、公海における漁業規制の強化、漁業従事者の高齢化など厳しい状況にある。こうした状況の中で、沿岸および近海の漁場を有効に利用して漁獲量を高めるために、いままでの「獲る漁業j から、貴重な水産資源を守るとともにそれを「つくり育てる漁業」(資源管理型漁業)への転換が叫ばれるようになってきた。しかし、その沿岸海域においても近年、北海道の日本海沿岸の岩礁地帯を中心として。いわゆる磯焼け現象が進行して有用海藻の生産が減少しており大きな問題となっている。磯焼け地帯の具体的対策の一つとして、磯場の波浪環境および流動環境の制御および磯場の地形改良等により有用水産生物を増養殖するための水面を造成するなど、磯焼け地帯の袋間を有効利用することが検討されており、そのための水産土木工学的手法に基づく技術の開発が求められている。本研究は、以上のような状況をふまえ、北海道の日本海側磯焼け地帯の磯場を主たる対象として、有用水産生物の水産学的知見を収集整理するとともに水産生物に好適な環墳を確保する上での水産土木工学的手法による磯場環境制御技術について検討するものである。本報ではその第一報として、まず磯焼け現象についてその概要を紹介し、この磯焼け地帯に生息するコンブ・ウニ・アワビについて水産生物的知見の中から環境要因を整理するとともにそれらを制御する手法を整理する。また、当研究室で実施中である磯場における増養殖水面の構造配置・水理機能に関する実験の概要について報告する。 |