河川流域の産業活動により、その事業施設から発生する排水は処理施設を経て河川等に排出されている。しかしながら、これらの施設の管理の不手際や事故あるいは河川への不法投棄により水質事故が発生し、時には魚類のへい死や上水の取水停止を招くことがあり、このような水質事故への対応が河川管理上重要な課題となっている。特に、発生した水質事故の汚染物質が、流下過程でどのような変化を示すか予測することは、下流域での被害の未然の防止、軽減を図る上で重要な課題のひとつと言える。本研究の第1報では、汚染物質の流下時間に焦点をおいた。ここでは、その推定方法として、現況の水位等の水理量から不等流計算によって流下時間を予測する手法を提案した。その結果、トレーサーのピーク濃度はほぼ平均流速にしたがって移流し、不等流計算がその流下時間をほぼ近似しうることを確認した。以上の成果を踏まえて、今回は汚染物質の流下過程で水質濃度自体がどのように変化するかを把握するため、これまで検証例の少ない実河川を対象に調査・解析を行った。ここでは、水質変化の推定に拡散方程式によるモデル計算を用いている。なお、この際、拡散係数が水質濃度を規定する重要な要因であるが、今回おこなった現地調査や、アメリカの河川での解析例をもとに、それが川幅・水深比のような河道水理諸元により決定できることを確認した。 |